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2020年7月1日(水)~8月31日(月)の期間に公募を行った結果、○○件のご応募がありました。一般投票と審査結果によって選出された動画には表彰等ございますので、個社ページよりご投票をお願いいたします。
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静岡商工会議所 Sing 今月のコラム
静岡商工会議所 令和5年度記念講演会
Sing2024年1月号

Jリーグクラブを核とした地域活性化について
Jリーグ
チェアマン
野々村 芳和 氏
【プロフィール】
1972年(昭和47年)5月8日生まれ
静岡県清水市(現在は静岡市清水区)出身
〈学歴〉
1995年3月 慶應義塾大学 法学部法律学科卒業
〈職歴〉
1995年 ジェフユナイテッド市原(現ジェフユナイテッド千葉)選手加入
2000年 コンサドーレ札幌(現北海道コンサドーレ札幌)に移籍、選手加入
2001年 同クラブ選手引退、チームアドバイザー就任
2006年 ㈱クラッキ 代表取締役社長
2013年 ㈱北海道フットボールクラブ(現株式会社コンサドーレ)代表取締役社長
2015年 公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)理事[非常勤]
2022年 ㈱コンサドーレ 代表取締役会長
2022年 3月 同社会長退任
公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)チェアマン(理事長)[現任]
公益財団法人日本サッカー協会(JFA)副会長[非常勤]
静岡商工会議所の「令和5年度表彰式」を2023年11月17日、静岡事務所会館5階ホールで開催しました(※被表彰者は12月号に掲載済)。表彰式終了後、Jリーグチェアマンの野々村芳和氏による「Jリーグクラブを核とした地域活性化について」と題した記念講演会を開催しました。講演は、司会のフリーアナウンサー是永真由子さん〔㈱MKスクエア代表取締役〕との対談形式で行いました。野々村氏の講演要旨は次の通りです。
(文責:企画広報室)
<司会>
2023年はJ2リーグで清水エスパルス、ジュビロ磐田、藤枝MYFCの静岡三国決戦が繰り広げられましたが、そのご感想をお聞かせください。
<野々村氏>
Jリーグの立場として、一つの県の三つのクラブが同じカテゴリーで戦うことは、非常に珍しく地域にも良い影響があったと思います。ダービーゲームは予想を覆す結果になることがあり、本年もまさにそういうことが起きました。
<司会>
私たちサポーターも12番目の選手として、応援したいと思います。
<野々村氏>
長くこの現場で実感していることですが、上手くいっているクラブは選手とサポーターが生み出すスタジアムの空気がとても良いです。大事なゲームがあと2試合、スタジアムだけでなく街全体で良い空気を作っていくことが結果に結びつくと思います。
<司会>
ご自身の経験を含めて、これまでのJリーグの30年間と、これから目指す姿と目標をお聞かせいただきますか?
<野々村氏>
Jリーグが1993年に始まり、自分は1995年にプロ選手になりました。当時はプロがどういうものか、どうあるべきかをほとんどの選手が分かっていなかったと思います。隣のチームに勝つために、チームが上に行くために、自分がステップアップするために、手探りで頑張っていたのが最初の10年だと思います。そういった中で、海外の情報が簡単に手に入る時代になり、海外に飛び出す選手が出てきて「プロとはこういうものだ」とか目指すべき場所が分かったことで、選手たちがプロフェッショナルになっていきました。そして、その次の10年・15年で、日本人の指導者がプロフェッショナルになったことが、日本サッカーの進歩の要因だと思います。Jリーグが発足して30年、これからフロントがプロになっていく番だと思います。フロントサイドの人たちが、プロサッカーチームをどう作るかとか、この国のリーグをどう発展させるかを考えて実行できるプロフェッショナルが増えていくことが次の発展の鍵だと思います。
<司会>
フロントがプロになるために必要なことは何ですか?
<野々村氏>
Jリーグのこの30年は、安定するために競争より共存を重視してきました。Jリーグは、良い意味でも悪い意味でも平等で公平なサポートが当たり前になっています。そういう環境でフロントが成長していくためには、世界との競争を意識して世界のサッカーマーケットの中でどうしていくべきかを考えることが大事だと思います。Jリーグが少しずつ成長してきた30年の間にヨーロッパは3倍・4倍の成長をしているので、それに追いつくようにJリーグも成長のスピードを上げていく必要があります。
<司会>
先月の新聞にJリーグは大きな転換期を迎えようとしているということで、開幕時期を現行の2月から8月頃に変更するとの議論が報じられていました。
<野々村氏>
シーズンを世界に合わせる議論は20年以上されてきたもので、1年間「日本のサッカーがどうやったら成長できるか」「どこに辿り着きたいのか」という視点で「変えるべきか」「変えないべきか」をみんなで考えてきました。
この件で僕がどうしても改善したいのが、夏場のパフォーマンスの低下です。夏場に選手のパフォーマンスが低くなることは現場で関わる人たちは感覚的に分かっていたことですが、データを集めると2月中旬の開幕時期のパフォーマンスが一番高く、それが段々と下がり6月~9月の暑い期間に最も低くなって、終盤に向けて上がっていきます。今まで僕らはそれを普通だと思っていましたが、世界のスポーツ選手のパフォーマンスは開幕から徐々に上がっていきシーズンの中盤でピークを迎え、疲労が蓄積する後半に向けて落ちていく山型のグラフを描きます。一方、Jリーグの選手たちは谷型です。アスリートとして成長するためにシーズンの中でパフォーマンスを徐々に上げて質の良いピークを迎える環境にすることが必要です。選手がパフォーマンスのピークに到達することは「その先」を見ることですので、選手が成長していくための重要な要素になり得ます。谷型のパフォーマンスを山型に変えるために、サッカー界全員で1年間かけて議論を通してシーズンの開幕を変える以外の具体的な改善案が出ていないこともあって、その流れになりつつあります。
開幕時期の変更について降雪地域の方から懸念されていますが、雪国の冬のスポーツ環境は昔から変わることがなく、12月から翌年3月の期間に広いコートでサッカーができる場所はほとんどありません。また、その環境を改善する施設ができる気配もなく、子供たちの運動不足などのデータがあるにも関わらず、なぜ降雪地域のスポーツ環境を変えないのかと疑問に感じていました。ですから、Jリーグの開幕時期が変わるのならば降雪地域のスポーツ環境をJリーグが投資してでもそういう施設を造れればいいなと思っています。サッカーが変わることで、暑い中でスポーツをすることや冬のスポーツ環境に対する「このままで良いのか?」という疑問を解消する一歩になるように日本中を動かしていきたいと思います。
<司会>
地域活性化という意味で、現在のJリーグの各クラブではホームタウン活動として地域と連携した様々な取り組みが推進されています。一例として、元日本代表監督の岡田武史さんが運営する愛媛県のFC今治では今治里山スタジアムの賑わい創出をはじめ、サッカーチームを中心とした地域再生への取り組みが全国から注目されています。
この静岡市でも清水エスパルスの新スタジアム建設の検討が進められ、静岡市活性化のシンボルとして清水エスパルスとスタジアムが持つ役割や活用方法について、清水で生まれ育った野々村さん個人のお考えをお聞かせいただけますか?

<野々村氏>
スタジアムのサイズやスペックについては、地域で考えることが一番だと思います。Jリーグが開幕した30年前からJ1のスタジアムは、15,000人以上の収容人数が必要というルールがあります。しかし、このルールは当時サッカーのスタジアムが国内にほとんど無く、全国各地にスタジアムを造っていくためにできたものです。先ほど岡田さんの話がありましたが、今治は5,000人収容のスタジアムです。地域の方たちが充分に楽しめるサイズであれば、それでいいと思います。5,000人収容のスタジアムに、5,000人の人が集まれば、その試合の空気はとても良いものになります。一方で、20,000人収容のスタジアムに5,000人しか来なければ、残念ながら良い空気は生まれません。静岡・清水の地域から考えて、どれくらいの規模のクラブを目指すのか、どんな試合を見せたいのかというところから、収容人数やスペックを考えていくべきだと思います
<司会>
野々村さんは、2013年から22年まで札幌コンサドーレの社長・会長を歴任され、北海道を大いに盛り上げました。また、社長に就任して10億7千万円だった売上を2019年には36億円にまで伸ばした実力者と聞いています。その手腕について、ぜひお聞かせください。
<野々村氏>
札幌は周辺を含めると人口約200万人の都市でローカルメディアが揃い、札幌ドームという素晴らしいスタジアムもあって恵まれた環境が整っていました。サッカーはビジネスで、所属選手に使える金額が順位に比例します。先ほどの10億円は、当時のJリーグで30番目くらいの売上だったと思います。J1を含めた30番目はJ2では12位ですから、札幌コンサドーレはクラブとしてJ2で12位くらいの力ですと、サポーター・メディアの人や地元の人たちに伝えるようにしました。そして、この水準まで売上を伸ばすことができれば、強化にこれだけの金を使うことができてJ1に昇格する可能性が出てくるということをサポーターに伝え、札幌ドームの大型映像ビジョンにパワポを使って「いま」の状況と「これから」を伝えました。もちろん、シーズンを諦めているわけはなくサポーターが作ってくれるスタジアムの良い雰囲気があれば、10億円くらいのチーム差を跳ね返すことができるので、その空気を作ってくださいとお願いしました。そうすることで僕たちがやることは明確になり、サポーターも自分たちチームの立ち位置を理解して応援するため、目標が一つになってみんなで頑張る空気ができていきました。この空気作りが最も重要だと思います。
<司会>
自治体との繋がりは、意識されましたか?
<野々村氏>
自治体に助けてもらう構図からクラブが成長して、行政の人たちが地域のためにクラブに協力を求めるような関係になっていくことが大事だと思います。そこから「勝つこと」「上に行くこと」を目指すためには、地域で生まれた良い空気の周りにビジネス的な要素をどれだけ付け加えていけるかが重要で、世界のマーケットの中で勝負するために地域の魅力で世界から人を引き込み、仲間にしていくのかを考えることが必要です。
<司会>
神奈川県川崎市は、かつてプロ選手が生まれにくいと言われていましたが、FIFAワールドカップ・カタール2022では代表選手26人のうち10人に縁があることで注目されました。こういった地域の子供たちの育成には特別なものがあるのでしょうか?
<野々村氏>
川崎地域は人口もサッカーチームも多く、競争ができる環境だったからだと思います。昔の清水も全国的にはサッカー人口が少ない時代に多くのプレイヤーがいて、さらに小学校3年生から清水FCに選抜される仕組みがあり、他の地域にはない競争がありました。だから、強く面白い選手が生まれたのだと思います。この競争が非常に重要で、時代に合わせた競争環境を作ることが成長に欠かせない要素です。それは選手だけではなく、クラブも共存の流れから競争にシフトすることが必要です。そのためにチームの分配金の割合を変えることが2022年に決まりました。
これから日本の人口が減っていく中で、サッカーマーケットの外貨をクラブやリーグが獲得することが重要です。ヨーロッパ5大リーグとJリーグは、スポンサー収入・チケット収入の差はほとんどありませんが、テレビ放映権料の収入が圧倒的に違います。これは、トップクラブが世界で魅力的になることで上がっていきます。そして、もう一つ移籍金の収入にもかなりの違いがあります。移籍はクラブの強化部やGMが担当するため、そういった役割の人たちの能力を高め、その働きが評価されるように変えていく必要性を感じています。先ほどフロントがプロにならなければという話をしましたが、その一つがGMで非常に重要な仕事ですが、日本ではヨーロッパのようにステップアップがなく、選手の移籍金でチームに利益をもたらすことへの評価が適切でないと思います。GMの評価が高くなり、能力の高い人たちが増えれば、今まで1億円で手放していた選手を5億円、10億円で売ることができるというようになっていくと思います。
30年前のJリーグは「センターフォワードの選手に2億円使えば勝てる」と言われていましたが、20年前には「2億円使うなら監督だよ」という考え方に変わりました。これからは「2億円使うなら社長とかGMに」と変わっていかなければいけないと思います。ヨーロッパ5大リーグでは、給料も含めてマネージメントサイドの人材への評価が日本と10倍ほど違うため、そこが見直されなければいけないと思います。
<司会>
清水エスパルスを核とした地域活性化について、ずばりお答えください。
<野々村氏>
活性化は既にできていると思います。全国的にクラブのサイズ・売上が伸びている中でも清水エスパルス、ジュビロ磐田はJ1のチームに伍していて、地域性も含めて上のカテゴリーにいることが当たり前のクラブだと思います。しかし、勝ち続けることは難しいことで、倍以上の規模の大きなクラブがある中で常に優勝争いをすることは現実的に難しいと思います。メディアもそれをなかなか伝えませんが、お金のことを含めたチームの状況を市民に理解してもらうことで、勝ち負けで吹く逆風がやわらぐと思います。
<司会>
これからの日本のサッカー界、Jリーグに対しての抱負を力強くお願いします。
<野々村氏>
Jリーグは、二つの大きな戦略を立てています。一つ目は、計60のクラブがそれぞれの地域で輝くことをいかにサポートしていくかです。二つ目は、Jリーグのトップチームがグローバルコンテンツとしてどう成長していくかです。相反するテーマですが、トップが伸びて外貨を稼ぐことができれば、それに続くクラブのサポートにも結び付きます。世界を意識してマインドを変えて、新しいチャレンジをして前に進んでいこうと思います。

静岡商工会議所 企画広報室