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2020年7月1日(水)~8月31日(月)の期間に公募を行った結果、○○件のご応募がありました。一般投票と審査結果によって選出された動画には表彰等ございますので、個社ページよりご投票をお願いいたします。
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静岡商工会議所 Sing 今月のコラム
Sing2023年3月号
ITを事例からひも解く

「現有スタッフで海外展開を実現するために必要だったこと」
IT経営マガジン
「COMPASS」
編集長
石原 由美子 氏
本連載では、IT経営マガジン「COMPASS」に掲載した全国のIT活用事例をもとに、中小企業の経営において、ITがどのように役立つかを解説していきます。
IT活用がうまくいかない、効果が出ないと悩む企業には、「会社をどうしていきたいか。そのためにITで何を実現したいか」という導入目的があいまいになっていることがよくあります。会社のあるべき姿を描き、必要なITを取捨選択していきたいものです。
「石垣ブルー」の美しい色合いの陶器を製造販売している沖縄県石垣島の石垣焼窯元は、積極的に海外発信を考えたところ、現在のスタッフだけで実現するには、IT化が必須であると考えました。
「COMPASS」2019年秋号から転載(記載内容は掲載時点のもの)
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<会社概要>
合同会社石垣焼窯元
沖縄県石垣市名蔵1356-71
設立:2007年(創業は1999年)
従業員数:5人
URL:https://www.ishigaki-yaki.com/
――――――――――
沖縄県石垣島、ブルーとエメラルドグリーンが美しい海岸近くに建つのが石垣焼窯元である。人気が高い陶芸体験の教室の奥では、琉球の海を彷彿(ほうふつ)させるブルーが際立つ石垣焼の品々が販売されている。
石垣焼は、現代表・金子晴彦氏の父が生み出した「よろん焼」をルーツとし、粉末にした鉱石と透明のガラスを使用した焼き物である。油滴天目茶碗を代表に、日常使いの食器、アクセサリーなど種類も豊富だ。
海外からも注目され、英国の大英博物館に常設展示されている。店舗には、近隣の香港・台湾からの来客も多いという。Webサイトは英語、フランス語に対応しているが、アート分野に焦点を当てたWebサイトを立ち上げ、海外への積極的な発信を行う計画を立てた。
「海外展開を現在のスタッフで実現するため、機械に任せられるところは任せたい。販売管理や在庫管理をすっきりしたいと考えました」。業務管理を担当する工藤晴美氏は状況をこのように説明する。
店内は観光バスが到着すると一気に来客数が増える。この時にも販売をスムーズに進めたい。また、自社店舗のほかにホテルなどへの卸販売があり、販売・在庫管理が複雑だった。表計算ソフトExcelでマクロを組むなど工夫をしていたものの、慣れないスタッフのうっかりミスでマクロが崩れてしまうなど、悩みがあった。
そこで、地元IT企業K.J.S社の「結シリーズ」を活用した。ツアー客のクーポン対応などが必要なため、カスタマイズしたPOSレジと、在庫管理、会計のシステムを導入。三つのデータを連携できる仕組みとした。
商品が焼き上がると在庫データを登録し、バーコードつきの値札シールを出力して商品に貼り付ける。レジの際にバーコードを読み取ると、同時に在庫が引き落とされる。売上データは会計にも自動連携するので、データを移す作業がなくなり、かつ正確さが保たれるようになった。さらに、クレジットカード決済や自動釣り銭機も導入した。金額決定後、現金を投入するとおつりが自動的に出てくるので、釣り銭の間違いが起きないのだ。
工藤氏は、「レジ締めが簡単になり、圧倒的に効率が上がりました。今後は、顧客管理もしっかり行い、リピーターを増やしたい」と意気込みを語った。
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【事例からヨミトル】
・「同じ人数で今までより多くの仕事をこなしたい」と考えると、ITを活用したい分野が見えてきます。
・POSレジ、在庫管理など、業務システムは分野ごとに提供されていますが、データを連携させると、さらに便利に活用することができます。
Sing2023年2月号
ITを事例からひも解く

「繰り返しの事務作業をロボットに任せる!?」
IT経営マガジン
「COMPASS」
編集長
石原 由美子 氏
本連載では、IT経営マガジン「COMPASS」に掲載した全国のIT活用事例をもとに、中小企業の経営において、ITがどのように役立つかを解説していきます。
前回に引き続き最新技術を現場に取り入れる様子を紹介しましょう。
いくつかのファイルからデータをコピーして表を作成、該当する人にお知らせするなどといった、人がパソコンを操作して行う定型業務。何度も繰り返す作業であれば、パソコン上のロボットに教えて自動化することができます。
朝、出社するとファイルが出来上がり、社内関係者への送信が完了していた、ということも現実になりました。いち早く導入を検討した企業の例を見ていきましょう。
「COMPASS」2020春号から転載(記載内容は掲載時点のもの)
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<会社概要>
昭和電機株式会社
大阪府大東市新田北町1番25号
設立:1956年
従業員数:241人
事業内容:送風機、環境改善機器の製造販売
URL:https://www.showadenkigroup.com/
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送風機、環境改善機器を製造販売する大阪府大東市の昭和電機は、積極的にITを経営に生かし、取引先との良好な関係を基盤に業績を伸ばしている。数年前からは、パソコン上の繰り返し操作を自動化するロボットソフトであるRPA(Robotic Process Automation)の導入を進めてきた。
「現在、40の業務にRPAを適用し、月間350時間の作業時間を削減しました。空いた時間で仕事の高度化を行い、競争力を確保したいと考えています」
昭和電機・経営管理部ICTシステムグループチーフの春山国彦氏は、RPAの浸透と成果をこのように説明する。
経営管理部長の鶴の一声で検討を始め、お試し利用や、RPAを適用できそうな業務の洗い出し、RPAツールの比較検討を行ってきた。最終的には、NTTグループの「WinActor」と、ユーザックシステム社の「Autoジョブ名人」「Autoメール名人」を選択し、組み合わせた利用とした。RPAを利用するにあたっては、まず、適用したい作業を選び出し、実行の流れを明確化して「作業シナリオ」を作成する。
同社では、ITベンダーに使い方を習い、モデルを参考にしながら、順次、業務ごとに作成を進めてきた。途中からは入社したばかりの2人の若手スタッフも「ロボットづくり」=動作シナリオ作成に携わっている。
では、どのような作業が自動化できるのだろうか。
最初に手掛けたのは、管理職の会議用に週報を集めてまとめる作業だった。
「参加者からレポートを送っていただき、一つのPDFファイルに編集しますが、ファイル形式をそろえる、締め切りを過ぎた場合の督促など、細かい作業が発生していました」と同グループの栗山隆史氏は振り返る。
RPA活用後は、「締め切りが近づくと未提出者にメールを配信。週報が届くと、一つのファイルに編集し、関係者に送付」─これが全て自動化された。そのほかにも社内でRPAが適用可能な業務例には、「タイムカードの打刻漏れ通知」「基幹システムから販売データを取り出して集計し、エクセルのファイルにして関係者にメールで送付」など幅広い。
「皆に理解してもらうために、RPAが動いているパソコンを見やすい場所に置くなど工夫もしました。最近は、『この業務に使えないか』と具体的なリクエストが来ます」と春山氏。
基幹システムのデータ分析を行うなら、システム側を改変する方法もある。この点について栗山氏は、「欲しいデータ項目は変化しますし、基幹システムの改変には時間とお金がかかることを考えると、RPAで柔軟に対応する利点は大きい」と言う。社内でつくるロボットだからこそ、変化に合わせやすいのだ。人に優しいインターフェースが逆にRPAでは扱いにくいなど、使って初めて分かることも多々あったという。今後は、「ネットからの受注→手配を自動化する」など、新しい取り組みに挑戦したいとのことだ。
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【事例からヨミトル】
・パソコンを使う仕事の中に、定期的に繰り返している作業はないか、点検してみましょう。
・作業の段取りを明確にできれば、RPA(パソコン上の作業をシナリオ通りに代行してくれるロボット)を活用し、自動化することができます。
・新しいテクノロジーを使うチャンスは増えています。
Sing2023年1月号
ITを事例からひも解く

「建設現場の作業報告・経営の見える化が各段にスピードアップ―『共創』の事例」
IT経営マガジン
「COMPASS」
編集長
石原 由美子 氏
本連載では、IT経営マガジン「COMPASS」に掲載した全国のIT活用事例をもとに、中小企業の経営において、ITがどのように役立つかを解説していきます。
モノとモノがインターネット上でデータをやり取りして自動的に動作をするIoT、人の判断を代行するAI、無人航空機ドローン(飛行は遠隔操作や自律制御)など、最新の技術について耳にしたことがあると思います。これらを活用して業務を圧倒的に便利にした事例も見られています。
一見、「中小企業には関係なさそう」な気がしますが、そんなことはありません。特に屋外で仕事をすることが多い第一次産業や建設業などは、新しいIT技術を適用できる場面が多くあります。
最新技術を現場業務に生かす際、ユーザー企業とITベンダーが業務課題を相互理解し、システムを試しながらよりよいものに育てていく「共創」という在り方が注目されています。
宮城県の建設業・丸本組は、県内のIT企業・トライポッドワークス社と共創し、土木工事現場の作業報告業務を革新しました。
「COMPASS」2022夏号から転載(記載内容は掲載時点のもの)
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<会社概要>
株式会社 丸本組
宮城県石巻市恵み野三丁目1番地2
創業:1946年
従業員数:170人
事業内容:土木・建築工事の設計および請負
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建設工事現場で重機が土を掘削(掘って土を処理する)。その様子をカメラ(一部ドローン)が捉える。これはただの「撮影」ではない。
建設会社側のパソコンやタブレットでは、重機の稼働時間、掘削した土の量、日/週ごとの変化、目標との乖離(かいり)など、工事の判断に必要な情報が見やすく表示される。進捗状況がすぐに把握でき、データを工事の作業改善に生かしている。
これは、宮城県石巻市に本社を置く丸本組(まるほんぐみ)と同県のトライポッドワークス社の共創にて開発した、AIを利用した工事進捗(しんちょく)の見える化ソリューション、および活用の様子である。
「工事の進捗確認は現場を見て手書きで行うのが一般的でしたが、建設業ではカメラなどを使って遠隔で把握できる仕組みが求められるようになりました。取引のあったトライポッドワークス社が基盤となる映像解析サービスを持っていると聞き、掘削工事でどう使えるか挑戦することにしました」
丸本組の技術支援部部長・山岸邦亘氏は背景をこう説明する。
映像を元に重機の動きをトラッキング(データとして追跡)して、AIが稼働・非稼働を判断したり、ドローンが撮影した画像から掘削した土の量をはじき出したり、データを整理して表示する。
IoT/AI技術でデータ取得は容易になりつつあるが、「生かし方」はさまざまだ。トライポッドワークス社は現場に足を運び、どんなデータが分かると業務改善に役立つか、どのような分析画面であれば使いやすいかを理解し、構築に至った。
丸本組では、データを見て気になったことがあれば映像に戻って確認できるので、感覚的にも分かりやすく、ノウハウを蓄積できる。映像を利用する同システムでは重機に装置を装着する必要がないため、センサー付きの重機に変えるなどの対応も不要。現場に影響を与えず、スタートしやすいのも特徴だ。
山岸氏は、「工事を行う側からすれば、監視されている感じもあるかもしれません。しかし、状況が見えれば動き方を変えたり、計画を練り直したり、生産性を上げることができます。使いながらさらにより良い在り方を考えていきたい」と、さらなる活用に意欲を見せた。
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【事例からヨミトル】
・現場の業務には、最新の技術を使って便利さを高めるチャンスが多々あります。
・業務上大事なポイントや課題をITベンダーと共有しながら最適な仕組みを共に創りあげる「共創」の取り組みは、今後さらに増えていくでしょう。
Sing2022年12月号
ITを事例からひも解く

「先を見据えたデジタル化プロジェクトで若手が成長」
IT経営マガジン
「COMPASS」
編集長
石原 由美子 氏
本連載では、IT経営マガジン「COMPASS」に掲載した全国のIT活用事例をもとに、中小企業の経営において、ITがどのように役立つかを解説していきます。
今すぐ困る危機に直面しているわけではないけれど、社会の変化、数年後を見据えるとデジタル化を推進するタイミング―長期ビジョンを立て若手中心のデジタル化プロジェクトを推進中の岡山県・フジワラテクノアートは、毎年計画的にIT導入を進めています。
その取り組みが評価され、2022年の「日本DX大賞 中小規模法人部門」で大賞を受賞しました。
なぜITなのか、どう進めているのか、プロジェクト初年度の取り組みを紹介します。
「COMPASS」2021秋号から転載(記載内容は掲載時点のもの)
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<会社概要>
株式会社 フジワラテクノアート
岡山県岡山市北区富吉2827-3
設立:1950年(創業1933年)
従業員数:147人
事業内容:醸造機械・食品機械の設計・製造など
URL:https://www.fujiwara-jp.com/
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改革への挑戦が働き手の力を伸ばす──デジタル化プロジェクトを進行中のフジワラテクノアート(岡山県岡山市)にて、「変えていく力」が醸成される様子を目の当たりにした。
同社は、酒やしょうゆなど醸造食品の製造設備などで業界トップシェアを誇る。オーダーメードの個別受注生産においてアフターフォローを大切にし、顧客との信頼関係を築いてきた。シェアの高さに安泰することなく、同社はモノづくりの高度化・新しい価値提供に向けて「開発ビジョン2050」を打ち出した。行動計画における重要項目の一つがデジタル化の推進だった。
副社長の藤原加奈氏はその理由を次のように語る。「2050年に向けた長期ビジョンを実現し、社会やお客さまに新たな価値を創造していくには、効率化や見える化でさらに時間や利益を確保すること、そして情報やナレッジを組織で共有し、若手の成長スピードを上げることが必要です」
2019年10月、各部署から若手中心にスタッフを集めて「業務インフラ刷新委員会」を発足。役員も参加し、課題の共有と適切なITツールの導入を推進している。
プロジェクトの事務局を担ったのは、ITのスキルを持つ経営企画室の頼純英氏だ。現場の課題を聞き取り、ITで実現できることとの橋渡しを行った。「集まった課題は100を超えました。これを図示して業務フローとともに整理し、優先順位を議論しました。取り組みの第一が生産管理システムです」。個別受注生産の特性から担当者がExcelで管理していたが、使い込まれてノウハウが詰まっており、バージョンアップもしやすい点から、パッケージソフトの活用を検討。ITベンダー4社に提案を求め、委員会の検討を経て、テクノア社の「TECHS-S」に決めた。受注-設計-生産プロセスの展開を統合管理できるようになり、製造に関する正確なデータが蓄積されると、見積もり精度の向上にもつなげられる。
同時に、これまでFAXなど紙ベースで行っていた部品仕入れ先への発注をオンライン化した(「BtoBプラットフォーム発注連携オプション」)。取引先の同意を得て、現時点で取り扱い発注書の95%が電子化された。「オンラインの受発注は嫌がられるのでは?」との懸念もあったが、これは依頼側の思い込みだった。コロナ禍ということもあり、取引先は協力的だったという。
また、受発注の電子化導入においては一カ所だけパッケージソフトをカスタマイズし、社内業務の効率化を促進させた。システム導入によって製造現場は月間80時間の削減、発注の電子化で月400時間・月12万円のコスト削減を実現した。さらに大きかったのがプロジェクトを通じたモチベーションアップだ。「できた」という経験が自信につながり、会社全体を見て動く意識が高まったという。今後も、計画に沿ってデジタル化を進め、モノづくりの高度化や新しい価値提供を実現していく。
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【事例からヨミトル】
・現場の効率化や見える化で、「次の手」を打ち価値を高める時間を捻出できます。
・ITの導入は、会社が目指す方向や全社視点での業務の理解を伴います。若手社員が成長する大きなチャンスです。
・目先の危機がなくとも、社内体制を整備していくこと、特にデジタル化の推進は、事業継続の原動力となります。
Sing2022年11月号
ITを事例からひも解く

「多品種少量生産で利益を上げる知恵」
IT経営マガジン
「COMPASS」
編集長
石原 由美子 氏
本連載では、IT経営マガジン「COMPASS」に掲載した全国のIT活用事例をもとに、中小企業の経営において、ITがどのように役立つかを解説していきます。
取引先からのニーズが高い多品種少量生産。しっかり儲けるには「頑張る」だけなく、仕組みづくりが欠かせません。
煩雑になる現場の負荷を減らすために、ITをうまく活用している企業があります。
「COMPASS」2022冬号から転載(記載内容は掲載時点のもの)
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<会社概要>
プラスエンジニアリング株式会社【仙台事業所】宮城県柴田郡村田町大字村田字西ヶ丘21
設立:1974年
従業員数:105人
事業内容: 生産設備用特注部品、製品用試作開発部品の製造
URL:https://www.pluseng.co.jp/
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「価格を上げ過ぎない多品種少量生産は、皆が嫌がるゾーン。見方を変えるとブルーオーシャン(競合性が低い)です。この世界で“儲かる”方法を追求してきました」
こう語るのは、機械部品加工を手掛けるプラスエンジニアリングにて、取締役・仙台事業所長を務める浅野謙一郎氏である。本社は東京だが、多くの社員が勤務する工場は宮城県柴田郡村田町にある。
1個、2個の受注が全体の半数以上を占め、単価も5000~1万円が中心だ。
同社は、2009年から、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)を基盤に改革を続け、納期の遵守、利益率上昇を実現してきた。
その柱が、(1)社員の能力を高め、多能工を増やす人材育成、(2)時間のかかる生産計画や正確な見積もり作成に寄与するIT活用である。
「不良品を減らすには、技能の基礎を磨くことが第一です。当社では3カ月単位で個人目標を設定し、クリアすると賞与時に賞金が加算されます。また、技能検定レベルに応じて、基本給に技能給が加わります」と浅野氏は説明する。
IT活用においては、生産計画の省力化と正確な見積もり作成に、自動生産スケジューラ「Asprova」を導入した。ただ、こうしたシステムを使うには、元となるデータが必要になる。
同社はモノづくりの工程を分解して手順と内容・技能レベルを見える化。同時に社員一人ひとりの技能段階(どのレベルの作業までできるか)を明らかにした。システムでは、受注した仕事を工程・必要なスキルに分解し、該当するスキルを持つ社員とマッチングして、作業スケジュールを自動作成する。高い技能を要する工程には、該当する社員が優先的に配置されることになる。
その結果、生産計画作成に要する時間が削減され、配置が最適化された。見積もり額の基準に関しては、加工実績を人や機械の作業時間に落とし込み、予測原価を参照できるシステムを構築し、適正利益を確保する体制を整えた。
浅野氏は、「製造業のデジタル化は、経営の源である利益をどう確保するかのアプローチが大切です」と指摘する。
現在は、営業支援の分野におけるAI活用にも取り組んでいるとのことである。
――――――――
【事例からヨミトル】
・業務が煩雑になりやすい多品種少量生産への対応こそ、ITの活用でバックヤードを効率化したいものです。
・「儲かっているか終わってみないと分からない見積もり」を出していませんか。見積もりの根拠となるデータをそろえ、適正な利益を確保しましょう。
Sing2022年10月号
ITを事例からひも解く

「『辞めます……』と言われる前に、会社ができること」
IT経営マガジン
「COMPASS」
編集長
石原 由美子 氏
本連載では、IT経営マガジン「COMPASS」に掲載した全国のIT活用事例をもとに、中小企業の経営において、ITがどのように役立つかを、解説していきます。
苦労して採用したスタッフ。長く働いてもらえるよう、さまざまな工夫をされていらっしゃることと思います。とはいえ、仕事内容によっては、いつも顔を合わせているとは限りませんし、スタッフ側は職場で不安なことがあっても上司に相談するのは勇気がいるでしょう。面談しても本音が言えないかもしれません。最近は、この分野にもITが役立つようになってきました。経営者・管理職とスタッフの間にあるコミュニケーションギャップを埋めるITツールを活用して成果を上げている企業の事例を見ていきましょう。
「COMPASS」2021年夏号から転載(記載内容は掲載時点のもの)
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<会社概要>
東洋ネクスト株式会社
宮城県仙台市青葉区一番町2-4-1
読売仙台一番町ビル10F
設立:2016年
従業員数:220人(パート・アルバイト・派遣含む)
事業内容:人材派遣、人材紹介、採用コンサルティング事業
URL:http://toyonext.co.jp/company
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「離職を減らし長く働いてもらえるよう、スタッフとの対話には力を入れてきました。しかし、人数が増えると物理的な限界もあります……」
宮城県仙台市の人材派遣会社・東洋ネクストの佐藤章央社長は、「多様な働き方を先取り」するユニークな事業展開を行っている。例えば毎日営業する飲食店が一人のスタッフを求めているとき、一人が30日間働くわけにはいかないが、平日午前中のみ、平日を週3日、土日可能といったさまざまな就労形態のスタッフを時間帯や曜日で組み合わせ、双方のニーズに応えているのだ。派遣スタッフが評価を受けて、3年後の直接雇用につなげるのが一番の望みだという。
しかし、業種にかかわらず、働き手の離職は悩みの種だ。欠員が出た現場の対応はもちろんのこと、働く側も悩みや不満を抱えたまま解決できずに退職し、成長の機会を失うことになる。毎日顔を合わせるオフィス勤務以上に、店舗などの現場に分かれる業態では、「辞めたい」と言われて初めて問題に気づくことも多々ある。
東洋ネクストでは、自社の派遣スタッフに適宜聞き取りを行い、派遣先企業にもレポートしているが、管理者によってスタッフの言葉を受け止める感度にばらつきがあり、また、スタッフ数が増えると面談機会を逃すなど、課題も生じていた。
「デジタルでスタッフの心の状態を可視化でき、離職の理由を知って適切な対応ができたらどんなに良いかと考えていた2020年夏に、『マインドウェザー』を知りました」
佐藤社長は、新しいITツールとの出合いをこのように話す。
「マインドウェザー」は洋服のお直し業を営むビック・ママが開発した、スタッフの「心もよう」を可視化するクラウドサービスだ。スタッフはLINEを通じてサービスサイトに接続し、気軽に今日の「心の天気」(晴れ、曇りなど、直感的に選ぶ)を回答したり、困りごとやサポートしてほしいことなどを書き込んだりできる。
管理者はスタッフ一人ひとりのコンディションや書き込み内容を管理画面で把握し、意見を受け止め、面談など状況に応じたきめ細かい対応を行っている。
取り組みを通じて、離職率を50%減らすことに成功した。
同時に、管理者側の課題も見えてきたという。
「上がってきた声に対するレスポンスが『こんなに出来ていないのだ』と気づきました」
佐藤社長はこう打ち明ける。
例えば、書き込まれた内容を見て、感情的にならず「事」に向かい合えるか。どう声を掛ければモチベーションが上がり笑顔で働いてもらえるのか。素早く適切なレスポンスを返せるかなど。離職の多さ=マネジメント層の弱さでもあったのだ。
離職の課題に向き合ってきた経験と実績をもとに、今後はスタッフの定着率を上げるノウハウを持った「HRコンシェルジュ」の事業展開も模索している。
「東北は30年後に人口が30%減少するといわれています。だからこそ、人事機能は大変重要です。採用・教育・定着面で地域に貢献していきたい」と、佐藤社長は今後の展開を語った。
【事例からヨミトル】
・離職を防ぐ対応策は、スタッフの状況を「知る」ことから始まります。
・現場の声をもとに、スマートフォンを使って、スタッフが簡単に「現在の状況」を伝えられるITツールが生み出されました。
・管理者側の対応も見える化すると、スキルアップにつなげることができます。
Sing2022年9月号
ITを事例からひも解く

「業務分野のどこからITを活用していくか―優先順位の考え方」
IT経営マガジン
「COMPASS」
編集長
石原 由美子 氏
本連載では、IT経営マガジン「COMPASS」に掲載した全国のIT活用事例をもとに、中小企業の経営において、ITがどのように役立つかを、解説していきます。
いまや、業務のあらゆる場面にITが使えるようになっています。そのため、「いろいろ話を聞いてどれから手を付ければよいか分からない……」ということはないでしょうか。
2023年10月1日から導入されるインボイス制度に代表される制度改正への対応を除けば、自社の事業にとってとても重要な部分、大切にしていること(特徴、強み)に着眼することもお勧めです。
今回は、ある介護事業者がまず、情報共有のIT活用に取り組んだ理由を、経営方針に照らし合わせて紹介しましょう。
「COMPASS」2020年秋号から転載(記載内容は掲載時点のもの)
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<会社概要>
有限会社親和(鞆の浦 さくらホーム)
広島県福山市鞆町鞆552番地
設立:2003年
従業員数:約70人
事業内容:介護サービス(グループホーム、デイサービス、小規模多機能サービス、居宅介護支援事業)など
URL:http ://www.tomo-sakurahome.net/
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広島県福山市の鞆(とも)の浦は、「歴史そのまま」の風情あるまちなみが広がる。住民の約半数は高齢者だが、まちのシンボル・常夜灯近くではベンチで懇談する元気な高齢者の姿が見られた。
鞆の浦に4拠点を構え介護・障がい者支援サービスなどを展開するのが鞆の浦・さくらホーム(社名:親和 以下、さくらホーム)である。
同社は、高齢者を施設に閉じ込めない、「地域の中での介護」「地域共生のまちづくり」を目指した。その思いは少しずつ地域で受け入れられ、まちの人々はごく自然に要介護者を見守り、介護スタッフは地域に溶け込んでいる。
大切にしているのは「その人らしさ」である。
経営陣の一人、羽田知世氏は次のように説明する。
「趣味や昔されていたことなど、その方の人生を皆で理解して、より良い関わり方を探しています」
そのため、スタッフ間では通常のケアマニュアル以上の多数の情報を共有し、誰が担当しても適切に対応できるようにしている。
しかし、小規模多機能サービス事業だけでも、月に延べ1300回の訪問がある。情報量が増えるにつれ、表計算ソフトExcelでの運用が限界に近付いていた。一般の介護向けITツールを探したものの、目的に沿うものは見つからなかった。
そんな時、介護事業も手掛けるITベンダーのNORTH HAND GROUPに出合う。同社はさくらホームが「実現したいこと」をよく理解して、自社の「N-SYSTEM」(クラウド型)をカスタマイズする提案を行った。
導入後は、介護サービス利用者ごとに時系列、シーン別、入手経路別の情報がすぐに探せ、写真も簡単に閲覧できるようになった。こうして毎日追加される情報が、日々の介護サービスに生かされている。
情報の活用はタブレットで行っている。介護現場での入力・閲覧が可能となり、情報共有にかかる時間を月当たり約300時間削減できた。
【事例からヨミトル】
・「自社が大事にしていること」「自社ならではの特色」は、IT活用によってさらに伸ばすことができます。
・情報共有ツールはIT活用の基本ともいえます。特に顧客に関する情報はしっかりと蓄積・共有して、サービスに生かしたいものです。
・「やりたいこと」を理解してくれるITベンダーを探すことも大切です。
Sing2022年8月号
ITを事例からひも解く

「『残業のない会社』をどうやって実現したか」
編集長
IT経営マガジン
「COMPASS」
石原 由美子 氏
本連載では、IT経営マガジン「COMPASS」に掲載した全国のIT活用事例をもとに、中小企業の経営において、ITがどのように役立つかを、解説していきます。
最近は「ハードワークで給料が高い会社」より「残業がなくプライベートの時間を大切にできる会社」を好む人も増えています。
30年ほど前、求人しても応募がなく、将来を憂いた経営者が、「残業がなく働きやすい会社」を目指して改革に踏み出しました。積み重ねの結果、今は……?
今回は、その名称ができる前から「働き方改革」を行ってきた企業の例を見てみましょう。
「COMPASS」2021年春号、2018年夏号から転載(記載内容は掲載時点のもの)
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<会社概要>
三元ラセン管工業株式会社
大阪府大阪市城東区永田1丁目2番37号
設立:1978年
従業員数:25人
事業内容:ベローズ、フレキシブルチューブ等の製造
URL:https://www.mitsumoto-bellows.co.jp/
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「原則残業はなく、年間の休みは120日以上確保しています。『プライベートな時間が確保できる会社』と認知されたようで、若手が集まるようになりました」
ブログが絶大なアクセス数を示す三元ラセン管工業(大阪府大阪市)の高嶋博会長は、社長就任時から行ってきた改革の結果をこのように話す。
同社は、自由に曲げられるフレキシブルチューブと、後継者がいない会社から譲り受けた伸縮する蛇腹チューブ・べローズの分野で、特殊素材での受注生産を目指した。
町工場には若手が集まらず、技術を伝承したくてもできないことが大きな悩みの一つだった。
では、受注生産にも関わらず、なぜ残業せずに帰れるようになったのか。
納期について顧客の納得を得て、無理な受注をしないことを心掛けつつ、短納期でつくれる技術・体制を持ち、約束した納期をしっかり守っている。Webで情報発信し、出展した展示会に見に来てもらえるよう、案内を続けた。
同時に、「多能工化」を進め、1人がカバーできる業務範囲を拡大。他の現場を手伝えれば、全体の効率が上がるからだ。
そして、ITの活用である。顧客管理システムを導入し、受注履歴をスピーディーに把握。過去の図面を探すことも多いため、文書検索システム「デジタルドルフィン」を活用し、キーワード検索で書類を簡単に探せるようにしている。
またグループウェアで互いの予定を共有することで、忙しい部署を手伝う文化も醸成された。
こうした取り組みの様子は、Webサイトやブログ、SNSからも広く発信。社員が辞めない・求人の際に若手の応募を得られる会社に変化していったのである。
【事例からヨミトル】
・残業を増やしている原因は何でしょう。「仕方がない」と思わずに点検してみましょう。
・ITを使うと、過去の情報を探す・活用する時間を短縮することができます。
・会社の特徴は積極的に発信していきましょう。求人にも効果があります。
Sing2022年7月号
ITを事例からひも解く

「DXの前提となる『挑戦する力』」
編集長
IT経営マガジン
「COMPASS」
石原 由美子 氏
本連載では、IT経営マガジン「COMPASS」に掲載した全国のIT活用事例をもとに、中小企業の経営において、ITがどのように役立つかを、解説していきます。
最近よく耳にするIT関連のキーワードといえば「DX(デジタルトランスフォーメーション」。デジタル技術をうまく使って顧客が喜ぶ新しい価値を生み出していくという概念です。基本業務の効率化を進め、デジタル化・ITツールの感覚がある程度分かった企業が、新たな変革に挑戦するイメージです。こうした動きが加速すれば、ITに距離を置き「変わりたくない」とかたくなな会社は、競争環境の変化に取り残される懸念もあります。
そこで今回は、IT活用を含め、「やってみる」「挑戦する」風土を醸成してきた経営者のインタビューを紹介しましょう。
「COMPASS」2021年秋号からインタビューを転載(記載内容は掲載時点のもの)
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<会社概要>
株式会社フジタ
富山県高岡市福岡町荒屋敷522
設立:1975年
従業員数:15人
事業内容:アルミ鋳造金型、プレス金型・部品加工等、開発から完成まで一括対応。町工場メタルアートミュージアムの運営
URL:https://www.fujita-k.co.jp/
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アルミ加工業のフジタは、2017年、工場近くに「ファクトリーアートミュージアムトヤマ」を開設。モノづくりとアートの融合という新分野への挑戦によりファンを増やし、現場での活気を生み出している。
背景には10年間続けている「カイゼン活動」やIT活用、そして「やってみる」挑戦マインドがある。
インタビュー
代表取締役社長 梶川貴子氏(文中、敬称略)
――社長就任から10年。取り組みの幅が広がりました。
梶川 工場・ミュージアム見学や一般の方にもご来場いただくイベントを通じて、製造業ではあまり発生しないBtoCのサービスを一つずつ経験してきました。発信した情報を見て、「面白い会社だから」と入社希望者もありました。
――大きな刺激になったようですね。2020年からのコロナ禍は?
梶川 VRの活用によるバーチャル工場見学やセミナーのネット対応にも取り組みました。また、工場内にWebカメラを設置したことで、現場の様子をスマートフォンからも把握できるようになり、便利です。時代に即したものは、いち早く使う姿勢です。
――ITに目を向けて、積極的に取り入れるのはなぜですか。
梶川 興味があるからです。例えば「クラウドだ」と言われても使ってみないと本当のところは分からない。実際、費用がかさんだり、言われるほどには使えなかったりという経験もしました。
――試してやめることも?
梶川 はい、あります。逆に、まだ十分使いこなしてはいないけれど、利用者に情報提供が手厚く、活用余地がある顧客管理サービスは使い続けています。
――製造業の未来やDXについてはどうお考えですか。
梶川 製造業は設備ありきで物事を考えがちですが、コンテンツやサービス感覚も必要です。そこを担える「人」を育てる環境づくりが経営者としての大事な仕事です。DXも最終的には人。当社もまだ全員が同じように変化しているわけではありませんが、「変わってきた」という手応えは、いずれ大きな力になると考えています。
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【事例からヨミトル】
・IT活用も、「試してみる」「やってみる」ことから始まります。
・導入したITツールが自社にフィットしないことも時々ありますが、その体験は財産です。
・挑戦する風土が人材の幅を広げます。
Sing2022年6月号
ITを事例からひも解く

「コロナ禍の在宅勤務に、素早く対応できた理由とは」
編集長
IT経営マガジン
「COMPASS」
石原 由美子 氏
本連載では、IT経営マガジン「COMPASS」に掲載した全国のIT活用事例をもとに、中小企業の経営において、ITがどのように役立つかを、解説していきます。
最近では、オフィスや工場、店舗などに出向かずとも、パソコンを利用する業務の一部を自宅や出張先、サテライトオフィスなどでこなせるようになりました(テレワーク、リモートワーク)。
新型コロナウイルス感染症拡大防止策の一環として、通勤者数の削減や時差出勤などが求められたのは記憶に新しいところです(大都市などではまだ継続中)。対応できた企業は、災害時にも的確な措置を講じられ、また働き方の多様性を推進できるでしょう。
もちろん、100%出社が必要な仕事もたくさんありますが、今回は、柔軟な働き方を実現するITの基盤について考えてみましょう。
「COMPASS」2020年冬号、夏号から転載(記載内容は掲載時点のもの)
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<会社概要>
グランド印刷株式会社
福岡県北九州市門司区松原1-2-5(東京、福岡にも支店がある)
設立:1969年
従業員数:34人
事業内容:シルクスクリーン印刷、看板・装飾、壁紙など
福岡県北九州市に本社を構えるグランド印刷は、シルクスクリーン印刷をはじめ、不動産業の販促支援、看板・装飾、デジタル壁紙など次々と新規事業を軌道に乗せてきた。
2020年春、新型コロナウイルス感染症にかかわる緊急事態宣言が出され、出勤者数抑制が求められると、同社は現場の半数を交代出社、東京支店の社員や営業・受注業務担当者をテレワークに移行するなど、迅速な対応を行った。
社会の要請に応え、社員の安全・安心も確保できたのである。
ではなぜ、素早く移行できたのか。
グランド印刷では、10年ほど前に、支店や顧客先にいる担当者も基幹システムを活用できるよう、クラウド化を行った。
「クラウド」とは、インターネット上の専門会社の設備内にデータやシステムを置き、ネット経由で利用する仕組みを指す。ネットがつながる場所なら、場所を問わず業務を進めることができるのである(もちろん、本人認証をはじめ、セキュリティ対策は必要)。
「東京支店ではノートPCを使っていましたので、自宅に持ち帰って受注作業などを行ってもらいました」
小泊勇志社長は当時の様子をこのように説明する。
遠隔での情報共有には、文字で会話や連絡、意見交換を行える、クラウド型のチャットシステムを利用している。
また、「当社にはすでにハンコがなかったことも奏功したと思います。例えば営業の見積もりにおいてはあらかじめ基準を設け、異なるときだけチャットシステム上で稟議(りんぎ)を上げる仕組みとしています。承認を得るための出社は不要なのです」とのことだ。
どこにいても支障なく業務が進められるようクラウド型を選んだことが、コロナ禍でも生きたのである。
*注 クラウド以外にもテレワークを実施する方法はある。
同社は、つねにIT投資を行い、基幹システムを改良し続けている。
例えば現在は、Webから注文が入った場合、ボタンを押すだけでシステムに顧客情報や売上情報が反映され、想定粗利も自動計算される。システムを導入した7年前に500社程度だった顧客リストは今や7000社レベルに増加したが、同じ人数で対応できているという。
「ITの活用で大事なのは売り上げを高めていかに儲けるか。必死になって業務をするのではなく、できることはコンピュータに任せ、どんな商品企画を立てたらお客さんが喜ぶかなどを考えて働くほうが楽しいでしょう。働き方改革の時代ですから」と小泊社長は力説する。自身も子育て中であり、時間の使い方の大切さが身に染みているそうだ。
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【事例からヨミトル】
・業務で使うITツールは、インターネットから利用する「クラウド」も増えてきました。
・クラウドの活用により、場所を問わず実施できる業務が増え、働き方に柔軟性が生まれます。
Sing2022年5月号
ITを事例からひも解く

業界独特の業務は、専用ツールで乗り越える
IT経営マガジン
編集長
「COMPASS」
石原 由美子 氏
本連載では、IT経営マガジン「COMPASS」に掲載した全国のIT活用事例をもとに、中小企業の経営において、ITがどのように役立つかを、解説していきます。
今回は、業界独特の業務に焦点を当てます。
仕事で使う身近なITツールの一つが、Office系ソフトです。特に表計算ソフトExcelはデータを様々な形で扱うことができ、便利です。
使っているうちに、扱うデータ量が増加したり、共有する機会が増えたら、業務用のITツールに切り替えることを検討しましょう。
データを安全に一元管理でき、より探しやすく使いやすくなり、業務の効率が上がります。
今回は小規模な不動産業の例を見てみましょう。
「COMPASS」2019年春号から転載(記載内容は掲載時点のもの)
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<会社概要>
株式会社フラッグコーポレイション
広島県東広島市西条下見
設立:1995年
従業員数:2人
事業内容:不動産業(賃貸物件の運営・管理)
広島大学のキャンパスが広がる広島県東広島市。この地で学生向けの賃貸住宅を運営・管理しているのが、フラッグコーポレイションである。自社所有物件が5棟ある。
不動産の賃貸業務においては、物件・部屋の基本情報、修繕・リノベーション記録、借り手側の顧客情報など、多数の情報を扱う。物件数が増えるにつれ管理する情報量は膨大になってきた。学生の入退去が集中する1~3月は業務が特に煩雑になる。
総務・管理部部長の片山慎治氏は、これらを分野ごとにExcelで管理してきた。
「内容ごとにファイルを開いていく手間があり、また、Excelの構造を知らないとうまく使えません。これではもし、新しい担当者が入っても、業務に慣れるまで時間を要してしまうでしょう」
例えば顧客名から部屋情報が見られる、「すぐ取り出せるカルテ」のようなシステムがあると便利だ。
片山氏は東広島商工会議所で開催されたIT活用・IT導入補助金のセミナーに参加。その後、商工会議所の勧めもあり、ITコーディネータによる個別支援を活用した。
アドバイスを受けながら、システムに求める要件を抽出し整理。
これをもとに、IT導入補助金が適用できる賃貸管理ツール2サービスを候補に。ITベンダーから説明を聞き、デモを見て、クラウド型の不動産管理サービス「賃貸革命」(日本情報クリエイト社)に決定した。無事に補助金の採択を受け、導入が実現した。
選定時に注意した点について担当ITコーディネータは、次のように解説する。
「2社からの提案を評価しましたが、その際、価格ありきではなく、活用イメージが合うかを意識してもらいました。また、豪雨災害の際、オフィスの入口まで水が来た経験をしていますので、社内にサーバーを置かずに運用できるクラウド型をお勧めしました」
本格的な効率化はこれからだが、「バラバラだった情報がひもづけされ、必要な情報をすぐに呼び出せるので便利です」と片山氏は笑顔で話す。
今後、物件数が増えても人を増やさずに対応できる見込みが立ってきたという。
「システムを使いこなして時間に余裕を持たせ、入居者さんへのサービスの充実や次の展開への準備も進めていきたい」(片山氏)とのことである。
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【事例からヨミトル】
・ITツール自体を「もっとフィットするもの」に置き換えていく姿勢が大切です。
・業界独自の業務がある場合は、業種に特化したITツールを探すことがお勧め。
・ツール選びには専門家のアドバイスもうまく活用しましょう。
Sing2022年4月号
ITを事例からひも解く

法令遵守の勤務体制で、若手の採用を増やす
IT経営マガジン
編集長
「COMPASS」
石原 由美子 氏
設立70年を迎える彦新は、「100年企業を目指し会社を長く継続できる経営」をポリシーとし、鉄製品や食品の運送を手掛ける。三代目・彦田敬輔社長は、代替わり後、若手が「入社したい」と思える会社づくりを進めてきた。
課題となっていたのがドライバーの勤怠管理である。
同社は関東、中部エリアを中心に荷主の依頼に対応。営業所2カ所に計37台あるトラックはフル稼働している。
大型免許のドライバーは、最大勤務時間が1日16時間まで、その回数やインターバル時間も細かく決められている。二つの営業所から日報が集まり、集計した後に時間オーバーに気づくのでは遅く、事務効率も悪いため、システム化が必要だったのだ。
そこで、ITツールを探し、2018年にIT導入補助金が使える運送業向けのサービスからロジ勤怠システム社の「勤怠ドライバー」を選んだ。
同システムでは、タブレット等による打刻入力に対応し、勤務実績が自動計算される。勤務時間が法令で定められた上限に近づくとアラートが出るので、早めにシフトを調整することができる。
また、同サービスは、インターネットを経由して利用するクラウド型。各営業所の状況を本社からリアルタイムで確認可能となり、事務作業の効率化が図れた。
働き方改革関連法に対応し、人材採用時に休暇や残業について質問された場合は自信を持って回答できるようになった。若手人材の採用につながっている。
一定の成果を得た2021年には、ドライバーが出発前に行う点呼とアルコールチェックを遠隔からも実施できるテレニシ社の「IT点呼キーパー」を導入し、2拠点の点呼を管理者1人で行えるよう効率化した。
「ドライバーが高齢化するなか、当社はシステムを整え、福利厚生や社員を大事にする経営で若返りました。これから、社員一人ひとりが目標を立て前向きに能力を磨いていけるよう、教育に力を入れていきます」と彦田社長は意気込みを語った。
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【事例からヨミトル】
・勤怠管理のように時間を計算したり、法令に沿ってアラートを発したりするのはコンピューターが得意とする業務です。勤怠管理を「出勤簿への押印」や「紙に打刻するタイムカード」で行っている会社は、ITツールを利用した管理に切り替えましょう。
・IT活用は導入がスタートです。使いこなしながらより良いものがあれば変更したり、関連するシステムを加えたり、PDCAを回していきます。
静岡商工会議所 企画広報室